第9章 熱
「泊まってく?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。と、泊まって!?ちょ、ちょっ、それって、その、あわわわ……!展開早過ぎるよ!ついていけない!
私が挙動不審になっている様子を見て、秀星くんは笑いを堪えている。
「ちょ、悠里ちゃん、何想像してんの……!」
「へ?」
秀星くんの声で、我に返る。冷静になれ、私。
「いや、俺明日の出勤は午後からだし、何なら朝起こして、朝ご飯ぐらいなら出せるけど。下着とか以外なら、洗濯もできるし、シャワーも完備。どうする?」
……正直、なかなか魅力的な提案。特に、朝ご飯のあたりが。デスクで眠るよりかは、床の方がまだ寝やすそうだし。でも、「ソウイウコト」の心配は無しにしても、やっぱり秀星くんは男の子なわけで。それって、一応女である私としては、軽く二つ返事をするのはどうなのかと思う。私が迷っていると、秀星くんは、冗談めかして言った。
「ま、もし俺が何かヤらかしたらさ、執行官宿舎だろうと何処だろうと、容赦無くドミネーターで撃たれるから。だから、バッチリ安心しなよ。」
……、そんな冗談、私は笑えないよ、秀星くん。だから私も、冗談めかして言おう。
「秀星くんは優しいから、大丈夫!だから、大船に乗った気でいるね!」
秀星くんはほんの少しだけ目を見開いて、はにかんだように笑った。
私はお言葉に甘えて、シャワーを借りて、外側の服だけを洗濯してもらっている。着替えは、まだほとんど袖を通したことが無いという、秀星くんの予備の服を借りた。私には少し大きかったが、別段気になるほどでもなかった。寝る場所は、ソファになった。私がシャワーを終えるころには、ソファの上にタオルケットを敷いてくれていて、クッションが1つ置かれていた。その辺りの配慮みたいなのに、秀星くんの人となりが出ていると思った。
私は私が自覚している以上に疲れていたのかもしれない。ソファに横になると、すぐに睡魔がやってきて、そのまま深い眠りについた。