第66章 星に願いを 前編
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翌日も、別のニュース番組を視聴したが、大手の報道機関は、報道を自粛しているのか何なのか、ほとんど機能していないような状態だった。不安だけが、私の中で肥大化して、私を押し潰しそうな心地さえした。ダメだと分かっているけれど、秀星くんの端末に、通話をしてみた。緊張して、デバイスを操作する指すらも、震える。しかし、結果は半ば私の予想通りだった。『只今、公安局以外の端末からは通信を遮断しております』云々(うんぬん)という内容の合成音声が流れて、結局繋がらなかった。恐らく、公安局のサーバーで、不必要な通信がカットされているのだろう。この分だと、メールを送ったところで、秀星くんに読んでもらえる可能性は低そうだ。私はそう思った。でも、私は秀星くんにメールを送らずにはいられなかった。
『秀星くんへ
大変なことになってるけど、秀星くんは大丈夫ですか?
ニュースで、公安局が大変なことになってるって思って、メールしました。
とにかく、無事でいてください。
私は、また、秀星くんの顔が見たいです。
お願いだから、無事でいてください。
悠里』
このメールが読まれるかは分からないけれど、送るぐらいは自由な筈。
この日も、秀星くんのことを思うと、心配で眠れなかった。