第66章 星に願いを 前編
「――――――何、これ……。」
つい数分ほど前までは、ウェブニュースの1つとしてしか映っていなかったそれらの動画が、いち、に、さん……、いや、全ての画面に映し出されている。見出しを読めば、これらの暴動は、同じような時刻に、別々の場所で起こっているらしいことが分かった。いずれも、都市部周辺だった。誰が撮影しているのかは定かでないが、リアルタイムで中継されているものまで紛れている。一瞬、これら全てが作り物では、という思考も頭をかすめたが、それこそあり得ない。この動画は、ネットワークを介して堂々と配信されている。このような動画をアップロードすれば、それがたとえノンフィクションであっても、その時点でシビュラシステムの検閲に引っかかって、動画はアップロードされる前に削除される。そればかりか、動画配信元まで突き止められて、ネットワークの使用を制限されてしまう。ついでに、公安局の職員もやってくることになるだろう。これはもはや、疑うことなき異常事態だ。それを裏付けるかのように、私の端末が、メッセージを受信した。送り主は、公安局管財課で、管財課職員全員に送信される緊急メールだった。これからしばらく、業務は休業で、自宅待機を命じる内容だった。そんなメールが無くても、あの動画を見て街へ出られるだけの勇気は、私には無い。
私が管財課からのメールを見ている間にも、次々と新しい動画がアップロードされていく。時々、画面が砂嵐になるということは、多少なりとも報道が規制されているということだろうか。しかし、また新しい動画がアップされていき、時にはコメントが炎上して、消えては、また……という感じだ。しばらく見ているだけで、現実感が私の中から消えていく。