第66章 星に願いを 前編
2月になった。
私は性懲りもなく、バレンタインは会えるかなぁ、なんて考えていた。そんな矢先のことだった。平日なのに、たまたまオフだったその日。いつも通り、ウェブニュースサイトを見ようと、ホロを起動させると、画面の1つに、とんでもない映像が紛れ込んでいた。
胸騒ぎ。
咄嗟に、その画面を拡大表示する。
見れば、映像は見知った街だった。いつも、私も通っている、見慣れた道。そこで、あろうことか、頭にヘルメットのようなものを被った男性たちが、バットや包丁などを持って、その辺りの人や物に対して、危害を加えている。これが、最新ニュース……?フィクションじゃなくて……?
そんなことを思っている間にも、今度は別の男性同士が殴り合いを始めた。それも、画面のそこらかしこで。私は、目を疑った。そもそも、シビュラの管理下で、このような暴力的な映像が一般に流されるということ自体が、ありえないはずではなかったか?それにもかかわらず、この、どう見ても暴力的な映像は、ネットを介して流され続けている。それは、何を意味するのか……?ここまで考えて、私はゾッとした。そのうちに、画面には大量のコメントテロップが流れ始めた。「こりゃすげぇw」「もっとやれww」「公安局何やってんだクソ野郎」―――――見るにも堪(た)えないような言葉の数々。そのうちに、画面端には大量のドローンと、恐らくは公安局職員らしき人が映って、鎮圧されていく。そして、画像は砂嵐に変わった。私も、画面の拡大表示を解除した。