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シャングリラ  【サイコパスR18】

第63章 『監視官』



「最近、何かよく分からんねーけど、書類仕事も増えるしさー。やんなっちゃうよなー。俺、デスクワーク苦手だってのに。ギノさんも、それが分かってんなら、俺には少なめに仕事の配分をするとかさぁ、そういうのあってもいいと思うんだよね~。」
「……、うん。」
 やっぱり、秀星くんが、というか、一係全体が忙しくなっているというのは、本当みたいだ。

「でも、新しい監視官が来てさ。今日のコだよ。朱ちゃん。」
 今日、仕事で会った、新人監視官。
「最初はさ。トップエリートだわ、聖人君子じみてるわで、正直どうなんだと思ったけどさ。この短い期間で、一係にもすっかり馴染んでるね。それにさ。」
「……?」
 目線だけを、じっと秀星くんに向けて、続きを促す。
「変わった『監視官』だと思う。『潜在犯』は、『犯罪者』とは違うとか、断言してくれちゃって。そこには雲泥の差があるんだとさ。それに、『潜在犯』も、“同じ人間”だってさ。すげェわ、何か。」
「……、うん。」
 今日初めて会った常守監視官だけれど、何だか分かる気がする。顔には幼ささえも残す彼女だが、確固たる“自分”を持っている……、そんな感じはしていた。それも、凛とした何か。だからかどうかは分からないが、彼女の周囲は、空気が澄んでいるような、そんな感じがしていた。社会が、大部分の人々が、『潜在犯』に対して向けている目など、きっと彼女には無関係なのだろう。彼女は、自らの内にある何かで以って、目に映るものを判断しているのかもしれない。私はただの凡人だけど、彼女からは、不思議な何かを感じる。……まぁ、羨ましくもあるけど。例えば、監視官への適性が出るぐらいに優秀な所とか、こんな短期間で秀星くんや他のメンバーと信頼関係を築けているらしいところとか。前者については仕方がないと思えるけど、後者については、自分でも頭が痛い……。だって、私なんて、秀星くん1人ですら、こんなに悩んだり、ぶつかったり、傷つけたり、狡噛さんをはじめとする方々に迷惑を掛けたりとか……。本当に。同じ人間なのに、この差は一体どこから生じてくるのだろうと問いたくなる。
 あとは……。
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