第61章 暗転 前編
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2人でベッドに入って、近くなる体温。直接触れ合っている部分はそれほど多くないけど、やっぱり私にとって、この温度が心地良い。
「あ、悠里ちゃん、その……。もうちょっと、こっち、来る……?」
秀星くんが、遠慮がちに声を掛けてくれた。どうしよう……。下着……。ブラジャーこそつけてないけど、上から普通の服を着てるから、私から言うか、秀星くんが私を脱がすか、私から脱ぐか、そのどれかをしない限り、下着姿を秀星くんが見ることは無い。
「……。」
どうしよう。でも、変なタイミングで自分から脱ぐのって随分妙だよね?でも、多分、最近の雰囲気からだと、秀星くんが脱がせてくるなんて無いし……。だから、黙っていれば、絶対に気付かれない。でも、突然自分から脱ぐとか、そんなのって……!
「悠里ちゃん?……、どったの?なんていうか、さっきからずっと、思いつめたような顔してさ……。」
秀星くんが、心配そうに私の顔を覗き込んできた。そ、そうじゃないの……!どうしたらいいの……!って、普通に黙っていればいいんだけど。
「……え?な、何でもないよ?」
私の声は、誰がどう聞いても上擦っていた。……。明らかに失敗した。これじゃあ、自分から何かありますって自白してるようなものだ……!
「……。いや、俺、これでも執行官なんだけどなー!刑事なんだけどなー!嘘とかついてるのとか、見破ったりすんの得意なんだけどなー!」
秀星くんが、からかうように笑いを転がしながら、掛布団の下で悪戯に笑っている。
「何?何?なーんの隠し事でしょ?」
いよいよ、本格的にからかうように、私のおでこを指でつんつんと突(つつ)いてきた。
「ちょ、やめてよ、秀星くん……!」
「だって、悠里ちゃんが言わねーし……!」
もう、いいや……。笑われてもいいから、言ってみよう……。
「わ、笑わない……?」
「うん?笑わないけど、何?」
「ちょっと、向こう向いてて。」