第61章 暗転 前編
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「うぅ……。持ってきたはいいけどさ……。」
私は今、秀星くんのお部屋……というか、脱衣所にいる。秀星くんが明日第二当直、私が休みということで、急遽(きゅうきょ)秀星くんのお部屋でお泊り。それはいいんだけど……。私に下着の替えがあるなら、一緒に洗濯しようか、なんていうお誘いに、ついうっかり返事をしてしまい、シャワールームを出た私は焦っている。さっきまで身に着けていた下着は、今頃洗濯用ドローンによって処理されていることだろう。いや、秀星くんは何にも悪くない。私が迂闊(うかつ)だっただけで。
そう。今、私の手元には、先日注文した例の下着しかないのだ。いや、だって、元々泊まる予定が無かったから、下着だって『一応』持ってきただけだったし……。なんて、言い訳をしてみても、下着がコレしかないんだから、最低でもドローンが処理を終えるまでは、コレを着て過ごすことになる。流石に、下着無しでは寒いし……。うぅ……。やっぱり、普通の下着を持って来たら良かった……。でも、私はそう思いながらも、どこかで、コレを着た私を、秀星くんに見てほしいなんて、思ってるんだ。それで、あわよくば「カワイイ」なんて思ってほしいんだ。だから、何かを言い訳にしてでもコレを着たいとかいう気持ちが、少しはあったりする。でも、そんな気持ちがあるのとは無関係に、自分に自信は無い。私って、何なんだろう……。
シャワールームを出て、食後のお茶なんかも貰って、髪を乾かして、歯磨きもしたところで、「そろそろベッドに行く?」なんて、秀星くんから誘われた。まだ、寝るには早い……ってコトは、ちょっとは、ソウイウコトも、期待していいのかな、なんて都合の良いことばかり考えている私。