第61章 暗転 前編
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「……先生って、いつも素敵ですよね。何というか、こう……、大人の魅力たっぷり、って感じで。」
「……。どうしたの、突然?」
ここは公安局刑事課フロア、総合分析室。唐之杜先生が普段仕事をしている部屋だ。
そして、その先生は、私の発した言葉に、脈絡が無さ過ぎて驚いている。
「いや、まぁ……。」
そう言って私は、遠い目をした。いや、先生の問いに対しては、全く返事ができていないけれど。
「私も、先生みたいな、大人の魅力が欲しいです……。」
「……。」
ちなみに、今はお互い勤務時間中だ。
先生は、わずか数秒後に、合点がいったような表情になった。
「あぁ!刺激が欲しいのね!?何、何~?そろそろ、シュウくんとのあんなことやそんなことも、マンネリ化してきた?それならそうと、もっと早くに言ってくれればよかったのに~!つまり悠里ちゃんは、欲求不満ってことね!」
「そ、そんなんじゃ、ない、ですよ……!」
きっと、先生は頭も勘も良いのだ。今だって、表現こそアレだけど、結論としてはまぁ合っているというか、何というか……。でも、それが時々困るっていうか……!
「隠し事が下手ね。ん~……そういうことなら……。」
先生は、ふう、と軽い溜息をついて、キーボードから手を離した。先生がこっちに近づいてくる。なんか、綺麗な女性が近づいてくるっていうのは、やっぱり緊張する。先生と同じ空間にいるのは、もうすっかり慣れている筈なのに。
先生は途中、無造作に置かれていた雑誌型の電子デバイスを手に取った。
「ん~……。それじゃ、こんなのは?」
「えっと、ん……?……ぶっ!!?コレって……!!!!?」
電子デバイスに表示されていたのは、なんかこう……。スイッチを入れたら振動したり、怪しい動きをするような、小型の装置……。俗に言う、『大人の玩具(オモチャ)』だった。ちょっ、先生!!私、コレを見てどんな反応をすればいいんですか!!しかも、これで私にどうしろと……!!??え?それに、何で?こんなところにロウソクなんて紹介されてんの?私の相談内容とロウソクって、どんな関係が?ケーキに刺して食べるの?え?