第58章 罪 前編
最近、というか、あの夢をみてから、俺は自分の内にある衝動を、明確に感じることが多くなってきている。いや―――――違うか。今までは、そんな衝動があったとしても、そこから全力で目を背けるようにしていた。見て見ぬフリ、というヤツだ。でも、一度だって明確に自覚してしまえば、それから以降、完全に無視をすることが難しくなってきた。仕事中や何かをしている時なんかは、そのことに集中できるから、必要以上に自覚することが無い。でも、今みたいなオフの時間一緒にいるとなると、自覚せざるを得なくなる。そう。俺は、俺だって、自分から悠里ちゃんを誘って、エロい事をしたい。悠里ちゃんに誘われて、それに応じるようなフリをするんじゃなくて、俺から悠里ちゃんを誘って、悠里ちゃんをめちゃくちゃにしたい。……まぁ、俺は『健康な市民』じゃないから、これが普通の恋愛感情なのかなんて、分からないけど。それに、俺らみたいな『潜在犯』の思うそれは、『健康な市民』の思うそれと同じなのだろうか。いや、仮に違うとしても、それは俺にとってはどうしようもないことで、どうだって良いことだけど。
「秀星くん……?」
悠里ちゃんは俺に、かすかに問い掛けるような視線を投げかけてきた。
「ん?あぁ……。何でも……。」
俺は、何でもないという風を装って返事をした。
「……、うん……。」
悠里ちゃんは、微妙に納得がいかないといった感じで頷きながら、俺から目線を外した。
「なんか、……、秀星くん、ぼーっとしてる?考え事?……何かあった?」
「え?ん、あぁ……。」
流石に、これ以上俺が上の空で居続けてしまうと、悠里ちゃんに不安を与えそうだ。何か手頃な話題を探すが、これといって思いつかない。まぁ、さっき悠里ちゃんがあれだけ喜んでいたのだ。『ぷよねこ』について、もう少し聞いてみるか。
「あ、『ぷよねこ』のキャンペーンってさ、どんな商品?何なら、俺もポイント集めに協力できるかも知んないし?」
「ありがとう……!で、でも、その……。言い辛いんだけど……、女性モノの下着とか、そういうのを扱ってるメーカーだから、……気持ちだけ、で……。」
「あー……。」