第57章 ラヴァーズ・パニック Ⅴ
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斯(か)くして事件は解決へと進んだ。結局、このオーナーこそが、『ラブ・ラビリンス』のオーナーであり、同時にクスリを売買していたのだった。クラブバーの関係者数名に対して、クスリの売買を委託していたということだった。オーナーとロミオはそれぞれドミネーターによって裁かれ、施設送りとなった。
狡噛と縢が連れ込まれたホテルは、元々廃棄区画にあり、各種スキャナー、つまりはシビュラの目の届きにくい場所に位置していた。それだけでなく、その部屋を含む数室が、電波暗室に近い状態だったとのことだった。そんなホテルだ。他の犯罪と関与している可能性が低くないとされ、追加で捜査の手が及ぶこととなった。
狡噛は、救援が来てすぐに、医療機関に回されたが、1日と経たないうちに持ち直し、退院となった。もちろん、退院して翌日には、何事も無かったかのように勤務に戻っていた。まったく、この男のバイタリティは、計り知れないとかいうレベルを通り越して、一種バケモノのようですらある。
何はともあれ、こうして潜入捜査は終了した。
―――――――縢の胸元に、紅い毒華を残して。