• テキストサイズ

シャングリラ  【サイコパスR18】

第56章 ラヴァーズ・パニック Ⅳ



「うふふ、カワイイ坊やね……?まだオネンネかしら?」
 気持ちの悪い裏声が、自分の頭上から落ちてくるのを、縢は意識の無いフリを続けながら聞いていた。
「ホラ、起きて?新しい世界へ案内するわ?」
 縢は、自分の左頬に、生温い手の平の感触を感じた。生温かい吐息も感じたが、何とか無視することにした。正直、縢としてはその手を引っ掴んで、顔面に一撃をお見舞いしてやりたかったが、この室内には、最低でもロミオと、このオーナー、そしてロミオと絡み合っていた大男がいる。この状況でオーナーを殴り倒せたとしても、ロミオと大男の2人を装備類すら無いまま同時に相手をして、勝てる確率は低い。せめて狡噛が縛られていなければ、押し切れるだろうが、狡噛は鎖で身動きを封じられている上に、負傷の身だ。満足に戦えない可能性もある。そのため、縢は大人しくしているより他、手段が無かった。

「ホラ……、起きなさい……?起きなさいってば―――――!」
 オーナーが、縢を揺さぶり始めた。
「起きないわね……。お姫様のチューが必要かしら……?」
(!!!!!???)
 そんな殺生な!縢はそう思い、ようやく意識を取り戻したふりをすることにした。

「……、―――――……、あれ、こ、ここは……?」
 自分の中の演技力をフルに使って、「たった今、意識を取り戻しました」といった様子を装う縢。
「うふふ。やっと起きたのね?カワイイ坊や?」
 縢が目を開けて、ゆっくりと顔を上げると、そこには自分を見下ろす、中性的な顔立ちの男の姿があった。気持ち悪い裏声の割には、外見はさほどでもない。さほどでもないとは言え、白いタイトなワンピースに同色のハイヒールという、一般的な男性が身に着ける服装とは大きくかけ離れていた。
/ 591ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp