第55章 ラヴァーズ・パニック Ⅲ
「こ、コウちゃん……。と、とりあえず……、見回り、行く……?」
「あ、……あぁ。」
もはや、仕事だとか捜査だとかいう気分には全くなれない狡噛と縢だったが、それでも仕事だ。前回同様、怪しい箇所が無いか、手早く見回る。あまりコソコソと嗅ぎまわっているような雰囲気を出してしまうと、怪しまれかねない。そのため、常套(じょうとう)手段とも言える聞き込み捜査も、控えていた。
結果は、前回と同じ。何の異常も無し。店の外も、店内同様、怪しい動きは一切見られなかった。
「収穫無し、か……。」
縢の呟いた声は、廃棄区画の闇に消えていった。