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シャングリラ  【サイコパスR18】

第54章 ラヴァーズ・パニック Ⅱ


***

 その翌日、潜入捜査が決行されることとなった。
「……。俺がクニっちの恋人役……、か。」
「そうね。不本意だけど。」
「いや、俺だって……!」
 縢がそう言いかけた刹那、縢の言葉は六合塚の視線によって、見事に止められた。縢は、蛇に睨まれた蛙のようにおとなしくなった。
「あ、いえ……。何でもナイです……。」

「まぁまぁ、年齢も同じなんだし、美男美女じゃないか。少なくとも、不自然には見えないぞ。」
 征陸が、何とかその場を収めようと発言するが、微妙な空気は払えない。
 だが、征陸がこう発言するのには、頷けるものがある。縢は、カジュアルなジャケット姿を身に着けている。明るい配色の衣服を身に着けることで、普段の黒いスーツでは出ない、彼独特の可愛らしさが出ている。一方の六合塚は、シックなワンピース姿で、年齢よりもぐっと大人びで見える。足元は、縢の身長を考慮してか、ヒールの無いパンプスを履いている。

「一係にいる女性は六合塚だけだ。年齢的に見ても、縢が相手役として最も適任だろう。」
 宜野座は、前日の狼狽など嘘であったかのように、キッパリと言い放った。監視官である宜野座がこう言っている以上、基本的に執行官である縢と六合塚に拒否権は無い。
「では、今から10分後には、縢・六合塚の両名には、一般客として入店してもらう。」
 宜野座は、あくまでも業務的に言い放った。

 10分後、作戦は開始され、縢と六合塚は恋人同士を装いながら、クラブバー『ラブ・ラビリンス』に入店した。
 しかし、その矢先。
「すみません、お客様……。お客様、女性ですよね?」
 六合塚が、店員の男に声を掛けられた。
「ぇ、えぇ……?」
「スミマセン。当店は、男性カップル限定となっておりまして、女性のお客様は、入店をお断りしております。誠に申し訳ありません……。」
 そう言われて、縢と六合塚が周囲を見渡すと、確かに辺りは男性客しかいなかった。
「でも、ネットには男性限定だなんて書いていなかったけど……?」
「えぇ。何でも2か月ほど前に、オーナーの急な意向で、男性専用になったらしいです。ささ、とにかく、女性は入店禁止ですので。それに、お客様もです。」
 六合塚が店員と話をするも、男性店員によって、縢・六合塚は両名共に、店の外へ追い出されてしまった。

 潜入捜査初日は、こうして呆気なく幕を閉じたのだった。
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