第53章 ラヴァーズ・パニック Ⅰ
「……ぁ、その、これは……!違くて……!悠里ちゃん、俺……、違う……!」
秀星くんは、必死になって否定しているけど、コレを見てしまったら、いくら秀星くんの言葉でも、単なる言い訳にしか聞こえない。
「何が、違うの?」
私の声は、自分でも驚くほどに低かった。きっと、顔だって怒りで強張っていることだろう。
「俺は……、悠里ちゃんだけだし……!コレはその、仕事で……!」
この期に及んで、何を言っているのか。確かに、『仕事』なのかもしれないけど、他の女にこんなことさせてたんじゃんか……!『執行官』って、“ソウイウコト”だってするっていうの?私は、『執行官』の仕事内容を全部知っているわけじゃないけど、っていうか相変わらずほとんど知らないけど、これは違うんじゃないのって、思う。
「―――――――っ……!」
もう、ダメ。涙が出てきた。秀星くんが、他の女性にこんなことを許していたとか……。確かに、本当に『仕事』で、仕方が無かったのかもしれないけど、仕方が無かったからと言って、私が傷つくかどうかはまた別問題だ。
私は、鞄を抱えて、秀星くんの部屋を勢いよく飛び出した。
後ろから、秀星くんの声が聞こえたような、気がした。