第53章 ラヴァーズ・パニック Ⅰ
……。
…………。
……………………。
……………………………………。
…………………………………………まさか。
「………………浮気?」
「ち!違う!……、違うって…………!」
秀星くんは、明らかに動揺している。こんなあからさまな反応、秀星くんにしては珍しい。というか、見たことも無いレベルだ。これを怪しまずして、何を怪しめと言うのか、疑問にさえ思うレベルだ。
「俺は、その……、悠里ちゃん、一筋だし……!そりゃあ、その、う……!」
秀星くんは、明らかに言葉に詰まっている。
「一筋だし、何……?」
あまりにも怪しい挙動なので、さらに突っ込んでみた。
「いや、何にも、ないけど、さ……。」
――――いや、何にも無かったら、そんな反応絶対にしないよね?
私は、挙動不審になっている秀星くんを尻目に、さっき触ろうとした首筋の下あたりを、注意深く観察してみた。
特に、怪しいところは……うん?
よく見ると、僅かだけど、肌が妙に赤いというか……、赤い点が……?
私は不意打ちで、秀星くんの首元に手を伸ばし、着ていた丸首のニットを少し強めに、下方向へ引っ張った。
「あ、ちょ……!」
秀星くんは、私の行動が予測できなかったのか、ニットを引っ張られた後、マズイといった表情を浮かべた。
秀星くんの首から胸の辺りにあったものは……
「―――――――な、何……、これ……!……っ!!」
そこには、点々と咲く、真新しい――――――紅い華。
―――――――そう、所謂キスマークだ。