第52章 ディストピア 後編
「あー……、つまり、“自由を制限する”ための檻じゃなくて、“隔離”のための檻ってことか。悪いとされているモノを遮断して、関わらせないようにするための檻――――――でも、それはシビュラの用意する“ゆりかご”でしょ。やっぱり、俺がいる場所と、悠里ちゃんがいる場所は、違う。……俺はどう足掻いたって『潜在犯』だし?」
俺の口から、自嘲的な笑いが漏れた。
「―――――っ、ごめんね、秀星くん。」
悠里ちゃんの声が強張っていたことに気付いて、俺は慌てて悠里ちゃんを見る。
「ぁ―――――、いや、ごめ――――――」
悠里ちゃんの眼は、微かに赤かった。
「……、ごめん。悠里ちゃん。えっと……。」
「―――――ううん、いい。その代わり……、っていうわけじゃ、ないけど……。」
悠里ちゃんは、ほんの少し頬を赤らめながら、自分の座っているソファーの、空いている部分を、ちょんちょんと控えめに指差した。
俺は、悠里ちゃんに呼ばれるままに、悠里ちゃんの隣に腰を下ろした。
……。
しばしの沈黙。それぐらい、今日は俺が打ち破ろう。
「ねぇ、悠里ちゃん。……、抱きしめて、いい?」
俺は、悠里ちゃんの返事を待たずして、彼女の身体を強く抱きしめた。
悠里ちゃんは、何も言わず、ただ俺に体重を預けてきてくれている。その重みが、これ以上ないくらいに心地良い。