第52章 ディストピア 後編
――――――俺は、いつだってもう、慢性的にイライラしている。この『社会』にだって、この『健康な市民』たちの街にだって、『健康な市民』たちにだって、シビュラにだって、……俺自身にだって。何ひとつとして、俺の思い通りにならない。いい加減、俺はこの『社会』にも、『健康な市民』共にも、うんざりしてる。本当を言うなら、全部メチャクチャにしてやりたい。シビュラなんて、この手でブッ壊してやりたい。
この世界に、理想郷も楽園も無い。少なくとも、俺の眼下に広がっているのは、途方もないディストピアだけだ。
分かってる。分かりきったことだ。この現実は決して揺らがない。絶対に変わらない。
それでも、それでもだ。
もし、まだ悠里ちゃんといられるのなら、ディストピアだって、それだって、きっと―――――――
俺は、悠里ちゃんの体温を感じながら、ゆっくりと瞼を閉じた。