第52章 ディストピア 後編
俺は、飲み物を一口、口に含んで、ゆっくりと話し始めた。
悠里ちゃんに出会う以前の、比較的小規模な事件に関するエピソードを、ぽつり、ぽつりと。潜在犯を廃棄区画で追跡した時のエピソードや、俺が遭遇した珍事件を。
ただ、いくら潜在犯といえども、実名を喋るわけにもいかないし、どこの廃棄区画なのかといった、具体的な地名を言うわけにもいかなかったので、そこは適当にぼかしながらとなったが。
悠里ちゃんは、さして面白いワケでもないだろうに、俺の話に真剣に耳を傾けてくれていた。俺は、そのことが何よりも嬉しかった。