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シャングリラ  【サイコパスR18】

第52章 ディストピア 後編



「前に、秀星くんと狡噛さんが、怪我して入院したこと……、あったでしょ?」
「あぁ、うん。」
「その後にね、偶然機会があって、狡噛さんと話をしたことがあって……。」
「うん?」
 悠里ちゃんは、俯きがちに、それでいてはにかむようにしながら、言葉を繋げた。

「狡噛さんに、『執行官』の仕事、過酷なことが多いんじゃないですか?辛くないんですか?って―――――尋ねたの。私が一方的に質問したんだけど。」
「ふぅん……。」
 一瞬、俺に訊けばいいのにと思ったけど、そこは敢えて口を閉ざし、言葉の続きを待った。
「そうしたら、狡噛さんは、――――――『俺には目的があるから』って。それだけ。」
「だろうね。コウちゃんらしい。」
「でもその後、秀星くんのことも教えてくれたの。」
「え?俺?」
 突然出てきた俺の存在に、不意を突かれたような心地がした。
「うん。……『本当は、縢のことを訊きに来たんだろう』、って。見透かされた。」
「……。」
「細かいことは本人に訊けって。でも、秀星くんは『執行官』の仕事だって、楽しんでる所もあるって、教えてくれたんだ……。」
「……。」
「あ、怒った?」
 悠里ちゃんが、少し遠慮がちに視線を向けてきた。
「全然?それぐらじゃ怒んないよ。んで?何が聞きたい?……まぁ、流石に喋れないことも沢山あるんだけどさ。」

「え……?いいの……?」
「他でもない悠里ちゃんの頼みだし?」
「うーん……。あ、じゃあ、秀星くんが楽しかった仕事……、ききたい……!」
 悠里ちゃんは、目を輝かせて俺を見つめてきた。
「……楽しかった、仕事……かぁ……。」
 俺は、天井を仰いだ。あまりに事件性の高いモノや、暴力的な話は、悠里ちゃんに聞かせるには向かない。でも、せっかく俺の話を聞きたいと言ってくれているのだ。そのリクエストには、可能な限りで応えたい。俺は、頭に浮かんだ幾らかのエピソードを吟味した。

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