第52章 ディストピア 後編
「前にも、ちょっとだけ、聞いたことあったけどさ。……、まぁ、あの時は、悪かったけど、さ。」
悠里ちゃんは済まなさそうにしながらも、ちらりと俺を見た。
……思い出した。俺が、犯人の返り血浴びてた時だ。まだ、悠里ちゃんと出会って間もなかった頃だ。エリミネーターで犯人を撃ち殺して、そん時の返り血が俺に付いていて、それを見て俺が悠里ちゃんに、余計なことを吐き捨た時だ。……まぁ、俺が大人気なかったことは、悪いと思ってるけど……。
「深い意味は無くて、秀星くんが、どんなお仕事してるのか、純粋な興味といいますか……。だって、私は管財課勤務だから、秀星くんは私の仕事現場に立ち会うことがあるのに、私は秀星くんの仕事現場に立ち会うことって無いから、それってある意味不公平……、とか……!」
悠里ちゃんは、少し慌てたように、言葉を紡いだ。
「えー?でも、結構一係のオフィスなんかにも入ってくるじゃん?」
「だって、……!」
「だって?」
「そんなときの秀星くんって……、その……。」
悠里ちゃんは、言葉を詰まらせている。明らかに、その先を言いづらそうにしている。
「その?」
俺が促して、悠里ちゃんはやっと続きを話し始めた。
「その……、私が入室した瞬間って、ディスプレイに向かってるか、あとは……ゲーム機で遊んでるかのどっちかぐらいだし……。」
言いにくそうにしていた理由は、コレだったのか。まぁ、いいや。事実だし。悠里ちゃんがオフィスに入ってきた瞬間に限って言えば、ほとんどゲームで遊んでる所しか見せていない気もする。
まぁ、要は俺がどんな風に仕事をしているのか、純粋に知りたい―――――ってコトか。それは何というか、悪くない気分だ。
「でも、事件について一般市民に喋ることは出来ないし、それにそんな話聞いて、悠里ちゃんの色相が濁ったらどうすんの?」
「私の色相はともかくとして……、やっぱり、仕事だし、ダメだよね……。」
悠里ちゃんは、少し気を落として、下を向いた。
「なんで、俺の仕事の話なんて、聞こうと思ったの?しかも、わりと突然に。」