第51章 ディストピア 前編
その瞬間、俺は自分の心臓が冷たくなったような気がした。
あぁ、そうだ。俺は、いつだって、悠里ちゃんからのこの言葉を恐れていたんだ。
あぁ、そうだ。俺は、この社会にいる限り、『犯罪者』だ。
あぁ、そうだ。俺は、この社会のゴミだ。
あぁ、そうだ。俺は―――――――――
俺は、自分の口元が吊り上がるのを止められなかった。
「そう、だ――――――――。」
俺は、都合よく濡れそぼっている悠里ちゃんの秘所に、自分の左手中指を勢いよく突っ込んだ。
「俺は悠里ちゃんを食い潰す、『犯罪者』だよ……!」
―――――――――グチュリ、グチュリ
俺の中指は、悠里ちゃんの秘所を掻きまわし、卑猥な音を立てていた。
「……っ、ぁ……!」
悠里ちゃんは、小さく悲鳴を上げている。痛いのだろう。
「なぁ、前から聞きたかったんだけどさ、うん。」
―――――――――グチュリ、グチュリ
俺は、呼吸を荒げながら、悲鳴を上げ続ける悠里ちゃんに問い掛ける。
「なんだって、俺みたいな『潜在犯』相手に、恋だの好きだの……、そこに「未来」なんて無いじゃんか……?」
―――――――――グチュ、グチュ
言いながらも、俺は指を休めない。
「ハイリスクハイリターンなら、まだ話は分かる。でも、ハイリスクローリターンどころか、百害あって一利無し。」
『健康な市民』の悠里ちゃんが、俺と関わるなんて、百害あって一利無し以外の何物でもない。
「街で楽しそうにしてる恋人同士見てさ、何にも思わないの……?」
―――――――――グチュ、グチュ
悠里ちゃんは、苦しそうに時々声を上げるだけだ。もしかしなくても、俺が喋っている内容なんて、全く耳に入っていないかもしれない。というか、そもそもここは俺の夢の中だ。本当なら全部、俺の独り言だ。それでも俺は、喋りつづける。