第50章 御伽話 Ⅵ
鈍い音がして、朝倉がベンチから崩れ落ちた。
「―――――狡噛、もう1度言う。幽霊を追いかけるのは、やめろ。」
宜野座がドミネーターの引き金を絞り、パラライザーを撃ったのだ。
「ギノ―――――――――!」
狡噛は、自らの内にに激しく渦巻く激情を押しとどめ、朝倉に駆け寄った。
(幸い、朝倉に適用されたのはパラライザーだ。この場で話が聴けなくとも、公安局に戻れば、取り調べができる……!)
「……あ゛、ぎィ――――――!?」
しかし、崩れた朝倉は、パラライザーで撃たれた人間の様子ではなかった。
「あ……!?」
狡噛は、思わず驚きの声を上げた。その声に反応して、縢も朝倉に駆け寄った。
「……何……、どゆこと……?」
縢の目に映った朝倉は、どこからどう見ても遺体だった。
朝倉は、仰向けになって倒れている。しかし、目は開いたまま瞳孔が動かず、その眼球は上転している。口はだらしなく開かれ、口の端からは泡が出ている。失禁したらしく、下半身は尿で汚れている。
狡噛が急いで脈を取ったが、既に心臓は停止していた。当然、呼吸も止まっていた。
「救急だ!医療機関への搬送を急いでくれ!」
狡噛が叫び、宜野座も迅速な対応に手を尽くした。
朝倉は、あっという間に医療機関に搬送されたが、既に帰らぬ人となっていた。