第50章 御伽話 Ⅵ
「公安局刑事課だ。朝倉瑠璃、お前を殺人容疑で逮捕する!」
宜野座はホロでできた刑事手帳を示しながら、もう片方の手でドミネーターを構えた。狡噛以外の執行官もまた、朝倉にドミネーターの銃口を向け、朝倉を完全に包囲した。
網膜判定によれば、彼女の犯罪係数は192だった。
(執行対象―――――!)
縢は、朝倉を『獲物』として見据え直した。ドミネーターの引き金も、システムによってそのロックを解除され、いつでもパラライザーを撃てる状態になった。
一方の朝倉は、休憩所のベンチに座ったままだ。5人の監視官・執行官に囲まれながらも、何かを仕掛ける様子もなく、抵抗するような素振りも全く見せない。それどころか、5人の突入に対して、驚く様子すら無い。朝倉は、自分に向けられた宜野座のドミネーターをただぼんやりと見つめている。ただし、朝倉の瞳には、恐らく何も映っていない―――――少なくとも、縢はそう直感した。
「―――――朝倉、ひとつ教えてくれ。アンタは、単独犯じゃない。それに、誰かがアンタの殺人を唆(そそのか)し、助力した。違うか?」
宜野座と、3人の執行官が朝倉にドミネーターを構える中、狡噛はドミネーターの銃口を下に向けたまま、朝倉へ語りかけた。
「……。」
朝倉は、何も答えない。
「頼む、答えてくれ!アンタ1人で殺人なんて出来なかった筈だ!違うか!?アンタに協力者がいなければ、この事件は成立しない。協力者の名前を教えてくれ!マキシマという名前に、覚えは――――!!」
――――――ゴッ