第49章 御伽話 Ⅴ
***
その僅か数十分後のことだ。ドローンもパレードの準備を終え、スタンバイ状態。もうすぐパレードが始まるという時だった。朝倉も一応、外へ出てパレードを見守ろうとしていた。
『――――ザ、ザザ……、ザザ……』
不意に、不穏なノイズが、園内に響いた。砂嵐のような音だった。
朝倉は、ぼーっとしていたが、その音で我に返り、辺りを見回した。その瞬間朝倉が確かに予感した、不吉な何か。とんでもない何かが―――――――
「な、何だ、アレ……!!」
「何?一体何なの……!?」
「どんな演出だ……?」
園内は、一気にざわめきだした。
「―――――――!」
朝倉は、ようやくその原因を視認できた。
『―――――ッ!―――――死ね!死ね!!アンタなんか、っ、ぐ!!!!早く、死んじゃえ!!!!―――っ、はぁ……、はぁ……!!』
園内の至る所にある大型モニターに、朝倉が映っている。その光景を見た瞬間、朝倉は心臓が止まるかと思った。いや、その場で心臓のひとつでも停止してくれたほうが、朝倉にとってはまだ安らかな最期だったことだろう。
モニターの中の朝倉は、真鍋の抵抗を払いながら、一心不乱に、その首にナイフを突き立てている。
『―――――許さない!!!!!―――――っく、あああああああああ!!死んで!!!!ああああもうっ――――!!!!!』
やがて、真鍋の抵抗が弱まったころに、朝倉は真鍋をメッタ刺しにした。モニターの中で飛び散る血飛沫(しぶき)。やがて枯れ果て、消えゆく断末魔。
『絶対に許さない!!!!!!アンタも―――――!!!!!!シビュラも――――――!!!!!』
モニター内の朝倉は、渾身の声と力で、真鍋を殺していた。何度となく、真鍋にナイフを突き立てている。―――――そう、この映像は、紛れもなく朝の控室内だ。ホログラムでも、グラフィックでもない、紛れもない、“ナマの動画”だ。本物の殺人映像だ。
『許さない―――――!!許さない――――――!死んで!!!死になさい――――――!!!!!』
映像の朝倉は、もはやとどまるところを知らないといった具合に、“真鍋だったもの”を犯し続ける。残酷と表現するには、あまりに憎悪と狂気が満ち過ぎている映像だ。