第48章 御伽話 Ⅳ
(でも、そんな幸せも、長くは続かなかった……。)
その半年後、真鍋杏が、別の職場から転属となって、『フェアリー☆ランド』へとやって来た。季節外れの転属。何でも、以前の職場が閉鎖になったことで、園長が面倒をみることになったとのことだった。沢口と真鍋は、年齢が近いということもあり、すぐに親しくなった。明るくて可愛らしい後輩である真鍋が、沢口と一緒に仲良く仕事をする様子は、傍目に見て微笑ましい光景であり、だが朝倉に少しの影を落とした。しかし、朝倉は沢口の誠実さを信じることにした。そう、たとえ年齢が一回り以上も違っていたとしても。もしかしたら―――――いや、それを考えることは虫が良すぎると知っていながらも、結婚だってしてもらえるかもしれない、と朝倉は考えていた。今となっては、そう考えていたこと自体、自己嫌悪の種にしかならないが。
そして、今から半年前、朝倉にとって決定的なことが起こった。出てしまったのだ―――――沢口の結婚適性が。沢口自身は申請をする気が無かったらしいが、親が判定を望んだところ、その結果が沢口誠也本人にも知れ、朝倉にも知れることとなった。―――――シビュラシステムという神託の巫女は、沢口の交際・結婚相手として、真鍋杏を指名したのだ。そこから、朝倉と沢口の仲がギクシャクし始めた。男女の仲など、一度噛み合わなくなってしまえば、あとは早い。そのまま、ついには破局してしまった。そして、沢口は親の勧めもあり、真鍋と交際を始めたのだった。
『センパイ、ごめんなさい。――――――まぁ、誠也くんのことは……年齢制限ってヤツじゃないです?』
『センパイ、後ろ向きだから、こうやって幸せ逃がしちゃうんですよ。』
『意味無いことはやめて、効率的にハッピー掴みましょうよ~!』
『人生、ポジティブシンキングですって!』
『センパイ、笑顔、笑顔~!』
(私は――――――忘れない。たとえ、システムが認めてくれなくたって、私の恋愛は、無意味じゃなかったって。それを―――――それを、無意味だと断じたあの女は、やっぱり許せなかった。それに―――――私の恋を邪魔する、システムだって、憎い――――――)