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シャングリラ  【サイコパスR18】

第46章 御伽話 Ⅱ


「それでは、表示しますね。」
 六合塚の声に合わせて、園長と被害者を含む5人の健診結果がホロ展開された。広いテーマパークを運営する人数としては、些か少なすぎるほどだが、最新鋭の技術をもって、可能な限りオートメーション化することによって、勤務スタッフの人数を最低限に抑えることに成功している。
 さらに、この官営テーマパークはシビュラ推奨ということもあり、職員のメンタルケアが丁寧に行われている。毎月、任意で簡易のサイコ=パス検診が受けられるだけではなく、3か月に1回は、必ず定期検診を受診することが義務付けられている。また、その検診記録は、職場内データベースにて、最低1年間保存することが義務付けられている。個々の定期検診の結果が、表示された。

「まずは、園長です。」
 1年間を通して色相はクリアカラーで推移しており、至って健康的なサイコ=パスだった。任意の健診も積極的に受け、色相管理に努めている様子がうかがえた。
「2人目、被害者の真鍋杏さん。23歳……だったようですね。」
 特に色相に濁りは見られない。むしろ、ここ半年ほどで、元々クリアだった色相が、さらにクリアになってさえいる。この女性は、世間で言われるところの、「メンタル美人」だ。
「被害者の真鍋自身は、至って健康的なサイコ=パスだな。」
 狡噛が呟く。
「次だ、六合塚。」
 宜野座が、次を促す。
「3人目……、朝倉瑠璃(あさくら・るり)さん、ですね。この園では、園長の次に年長者ということになるのでしょうか。35歳の女性です。」
「あれ?なんか、波ある?このコ?」
 縢が、結果を指さしながら、首を傾げた。
「1年前と9か月前は、完全にクリアカラーだけど、6か月前にはちょっと色相濁ってて……、あ……、3か月前と1週間前には結構濁っちゃってるね~。セラピーの受診まで勧められちゃってる~……。」
 縢の言う通り、朝倉の色相は、9か月前までは完全にクリアカラーだが、6か月前から翳(かげ)りを見せ始め、それ以後は濁りが悪化している。『潜在犯』のレベルまでとはいかないが、『健康な市民』にしては、それなりに濁っていると言える。
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