第46章 御伽話 Ⅱ
「い、いえ……、私は、そんな……、仕事以外のことで真鍋のことを詳しく知っているわけではありませんので……。」
本田は、内心では戦々恐々としながらも、必死にその内面を抑えながら話す。
「じゃ、まずは聞き込みだな。本田園長、今からここのスタッフを全員、集めてくれ。」
狡噛が本田に言い放つ。
「そ、そんな……!無理です……!今、このテーマパークは、通常通りに営業を行っています!招集なんて……、そんな……!それに、貴方がたは、シビュラの選んだウチの職員を疑うというのですか……!?」
「構わないぜ。もし、この異変が来場者に気取られでもして、ここら一帯が大規模サイコハザードの発生源になったって。ココの責任者はアンタなんだろう?」
狡噛が、歯に衣着せぬ様子で言い放つ。
「ぐ……っ!で、では、この場所に、職員全員を集合させられるよう、「上」とも掛け合ってみます……。」
本田は、苦虫を噛み潰したような顔で、狡噛を見た。本田は、すぐさま端末を取り出し、どこかと通信を始めた。
話し始めて10分ほどで、本田が溜め息と同時に通信を切った。
「今から1時間後に、この部屋に職員全員を集めます。……ただし、時間は30分間のみです。それを超えると、営業に支障をきたしますので……。これが、「上」の判断です……。」
本田の額から汗が幾筋も伝って、流れ落ちた。
「それでは、ここの職員全員の、サイコ=パス検診の結果をご提示ください。捜査にご協力いただけますね?勿論、園長の結果もご提示いただきます。」
宜野座が、静かに口を開いた。その瞬間、本田の肩がビクッと揺れた。別段、宜野座としては相手を威圧しているつもりなどは無いのだろう。しかし、宜野座の纏う雰囲気は、本人が意識することがなくても、相手に圧力を与えてしまうのかもしれない。
「は、はい……。」
本田は、端末を操作して、公安局の端末へと検診結果を送信した。