第46章 御伽話 Ⅱ
「よし。これならすぐにでも調べがつく。」
宜野座は、余裕の口ぶりだ。今日、園に来た中で検索に引っかかったのは僅か3人。これなら、数分もあれば、調べがつく。すぐさま本部を通して、個人記録へアクセスする。
1人目は武山和樹36歳。色相はライトグリーン。1年前に対人関係のトラブルからサイコパスが悪化。しかし、数カ月後には転職を果たし、今は医師の診断を受け、定期的にメンタルケアを受けており、サイコ=パスは回復の兆しを見せている。さらに、直近の定期検診でもその犯罪係数は46。その他記録も参照したが、不審な点は無い。2、3人目も同じように記録を参照したが、色相が多少濁り気味だったというだけで、これといって不審な要素は見出せなかった。
「ど、どういうことだ……。シビュラの目は誤魔化せない。この3名は、犯人ではない、ということか……?」
宜野座は、解せぬといった具合で、ブツブツと何やら逡巡している。それもそのはずである。あまりにも色相の濁った人物であったのならば、そもそもゲートを通過することができない。
「ぐ……。捜査は手詰まり、か……。」
しばらく考えた後、宜野座は溜め息を吐いた。
「何言ってるんだ、ギノ。」
狡噛が、獣のごとき眼光で遺体ホログラムを見つめながら、短く呟いた。
「被害者は何度も首を刃物で傷つけられてる。普通に殺すなら、どう考えたってここまでヤる必要は無いって事ッスよ。」
「ど、どういうことだ……?」
宜野座が、驚きの形相で、縢を見る。
「怨恨だよ、監視官。」
横から、征陸が会話に割って入ってきた。
「怨恨?恨み……か?」
「とっつぁんの言う通り、遺体の状況から見ても、その可能性が最も高いだろう。園長、真鍋杏(まなべ・あんず)の人間関係について、心当たりは?」
狡噛の鋭い視線が、本田に注がれる。