第45章 御伽話 Ⅰ
「……、こ、ここは「官営」のテーマパークです。……「国」が『シビュラ』のお墨付きを得て、「健康」で「安全」な施設として営業されています。「健康」「安全」を謳い文句として営業しているこのテーマパークで、その……、こういった、穏やかではないような、ことがあったと……、知れたら……!このテーマパークが閉園に追い込まれるだけじゃ、す、……済まないんです……!そんなことに、なったら……!世間に、多大なストレスを与えることに、なってしまいます……!シビュラの守る、社会秩序を、私も……、守りたいのです……!」
本田は、必死の形相で宜野座に訴えかけた。
「シビュラの維持する秩序を崩さないことが、大前提ということだな。それなら、筋が通らないわけでもないか……。」
そのやり取りを聞いていた縢は、「官営」の意味するところをまざまざと見せつけられたような心地がした。成る程この『社会』では、実際に犯罪が起こって死人が出たという事実よりも、シビュラシステムへの信頼が揺らぐことの方が重要ということか。いや、こんなことは、分かりきっていたことだったか。そう思えば、縢の口からは小さく失笑が漏れた。
「……。わ、わたくし共は……、「普段通り」の営業を、するように……「上」から言われているんです……!仕方ないんです……!でも、刑事さんたちがおっしゃるように、第二の被害者が出たら、今度こそ、こ、今度こそ……!もうダメなんです……!助けてください、刑事さんたち……!!う、うわ、あぁぁぁぁ!」