第45章 御伽話 Ⅰ
「うっわ~。派手にヤられてんね~。」
「こりゃあ、ひでぇ有様だな。仏は随分痛かったろうに。」
縢が率直な感想を述べる。征陸は、その横で顔を顰(しか)めている。
それもそのはずだ。映し出された真鍋の遺体は、一見しただけで首の辺りを何度も刃物で刺されたような刺し傷があり、それを庇ったのであろう両手にも、分かるだけでも刃物傷が数か所。更にはトドメと言わんばかりに、下腹部にも大きな刺し傷があった。当然と言わんばかりに、遺体の周囲には大きな血だまりができていた。
『死因の解析結果が出てるわ。もう見て分かったと思うけど、出血多量によるショック死ね。凶器は恐らく、刃渡りがそれなりにある……切れ味の良い刃物か何かね』
唐之杜の声が、通信機越しに部屋に響く。
「「殺し」で決まりだな。で?志恩。肝心の凶器は見つかったのか?」
狡噛が冷静に言い放つ。
『それが、今のところ見つかっていないの。ドローンたちがホロを被りながら捜査を続けてるけど、限られたドローンで園内を調べつくすのは難しいわね。最悪、凶器とか重要な証拠になるようなものは、もう犯人が持ち去ったかもしれないし……。』
「園長、今すぐ出入り口を封鎖して、来援客全員を対象とした大規模サイマティックスキャンを実行すべきです。」
「ええ。監視官の言う通り、すぐに園を閉めて、犯人を割り出すべきでは?一般の来場客に犯人が紛れている可能性も、十分あります。事態は急を要します。」
宜野座の言葉に、六合塚が続く。
「そ、それが……。上(うえ)が、……。仕方ない、んです……。」
「犯人がまだ園内もしくは付近にいて、第二の被害者が出る可能性だって否定できないこの状況で、何を言っているんですか!?」
宜野座が、信じられない、といった具合で本田を見る。