第45章 御伽話 Ⅰ
「な、何コレ……。」
チワワをモチーフにした、大きな目がキラキラ輝くキャラクターだった。
「おじさん、何か仕組んだ?」
「ら、ランダム付与ですので、そんなことは……!」
「くだらないことは気にするな。行くぞ。」
ヒョウの姿をした宜野座が、クールに先行するが、可愛らしいヒョウの姿では、それも似合わなかった。
「それにしても、ホントに、普通に営業されているのね……。」
可愛らしいウサギのホログラムの下、六合塚によって呟かれた言葉は、誰に聞かれることもなく、テーマパーク内の喧騒に紛れて消えた。
「こちらが、スタッフルームです。」
本田がメルヘンな桃色の装飾が付いた扉を開けると、中は普通の部屋だった。部屋に入ったと同時に、一係の面々はホロを解除した。
「ここか?真鍋杏の遺体が発見されたってのは。」
狡噛は単刀直入に、本田へ切り込む。ホロで覆われていた鋭い目線が、本田を突き刺す。
「あ、いえ……。その……。遺体が発見されたのは、この奥の部屋です。……、このスタッフルームには、部屋が3室ありまして、今皆様がおられるのが、お客様が気分を悪くされた時などにも使われる臨時の休憩室にもなる部屋でございます。その奥がスタッフの休憩や着替えなどに使われる控室、さらにその奥が普段は使われない物置になっている部屋になります。遺体は、この扉の向こう、控室で発見されたのです……。」
「入っていいか?」
「お、おい、狡噛!」
宜野座の制止を無視して、狡噛は部屋の奥にある扉を開けた。
「この部屋か?」
「狡噛!」
狡噛は、宜野座の言葉など全く意に介さず、部屋へと入っていく。他の執行官も、それに追従する。
遺体そのものは、既にドローンによって綺麗に片づけられており、血液ひとつ見当たらない。
『あ、遺体発見現場に入ったの?それじゃあ、現場検証を始めて頂戴。』
通信機から、唐之杜の声が響く。小型のドローンが数体、部屋の中へ入ってきて、精巧な立体ホログラムを映し出した。映し出されたのは当然、真鍋杏の遺体ホログラム。