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シャングリラ  【サイコパスR18】

第45章 御伽話 Ⅰ





「こ、ここからは園内になりますので、少しだけ、その……、ホロとか、何か……、被っていただきませんと……、その……、他のお客様に不安を、与えてしまうと言いますか……。」
「え?んじゃ、コミッサちゃんで……。」
 縢が執行官デバイスを操作しようとした瞬間、狡噛がそれを制した。
「コミッサは公安局のキャラクターだ。そんなモン被って歩いてみろ。最悪だって事だろ。」
 狡噛は、ふう、と息を吐いた。縢は、「あ、そっか。」と呟いて、執行官デバイスから手を離した。
「え、えぇ……。」
 本田は、居心地が悪そうに頷いた。
「どうする、監視官?」
 征陸が、宜野座へと視線を送る。宜野座はイラ立った様子で、無言のまま本田を見た。
「あ……、あの……、ここは公共スペースではないので、フルフェイスホロの使用が許可されています……!こ、この園のキャラクターたちのフルフェイスホロで良ければ、データを差し上げます。皆様コスデバイスをお出しください……!」
「ご協力、感謝します。」
 宜野座が本田に言うのと同時に、一係はそれぞれ監視官・執行官デバイスのコスモードを起動させて、本田へと腕を突き出した。
「……、ハイ、これで送信完了です。今回は男女兼用のものです。では皆様、送信したホロを被って、ご入場ください。
 一係のメンバーの見た目が、一気に変わった。宜野座はヒョウ、狡噛は黒猫、征陸はカバ、六合塚はウサギを、それぞれモチーフにした愛くるしいキャラに変貌した。コミッサのホロ同様、見た目は着ぐるみを着ているような感じだ。
 この園の動物は、皆この『フェアリー☆ランド』の妖精という設定らしく、どの動物の背中部分にも、4枚ほどの美しく輝く羽根が生えている。全てのキャラクターは二頭身にデフォルメされており、大変可愛らしくはあるが、お互いホロの中身を知っている人間同士だ。一係の心境としては微妙なものがある。
「中年のオッサンが、着ぐるみ遊びってのも、なァ……。」
 征陸は、左手の義手で頭をぼりぼりと掻きながら呟いた。狡噛は、相変わらずの無表情。彼にとって、捜査の名の下(もと)に多少可愛らしいデザインのホロを被ることは、特に意に介すべきことではないらしい。六合塚は戸惑いながらも、実は心密かに喜んでいた。フルフェイスホロの下では、そのポーカーフェイスが僅かに崩れていた。そして、縢は……。
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