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シャングリラ  【サイコパスR18】

第45章 御伽話 Ⅰ


***

 官営テーマパーク、『フェアリー☆ランド』。シビュラ推奨の娯楽地である。100年前には日本国内にわりと数多く点在していたらしいという遊園地の外観を残しつつも、そのほとんどは自動(オートメーション)化され、多くのドローンたちにより安全に、「健康的」に運営されている。また、新作の環境ホログラムがふんだんに取り入れられており、その外観は100年前のそれとは比べ物にならないほどに華やかで、日常からかけ離れた空間が演出されている。
「へ~!ここが御伽(おとぎ)の国、『フェアリー☆ランド』か~!」
 縢は、入り口で足を止めて幼子のように目を輝かせている。とはいえ、公安局刑事課が、一般客の出入りする正面ゲートから堂々と入っていくわけにもいかない。人目につかぬよう細心の注意を払いながら、職員専用の通用口から園内に入る。
「仕事よ。急ぎなさい。」
「うぃ~。」
 再び六合塚にたしなめられ、縢はようやく足を動かした。

 刑事課一係の面々を迎えたのは、50代半ばぐらいの小太りの男性だった。
「お待ちしておりました……。こ、公安局の皆さま、ですね……?」
 男性はハンカチで額を拭いながら、俯き加減に呟く。男性は明らかに世間のファッションからズレた赤いチェック柄の吊りズボンに、上半身は黄色いTシャツを着用している。
「わたくし、ここの責任者兼園長の、本田幸村(ほんだ・ゆきむら)と申します。貴方が、監視官さんですね……?」
 浮世離れした服装も、自らがテーマパークの園長であるということを意識してのことなのだろう。それにしても、遺体発見現場への案内人がこの格好というのも、随分と滑稽な話である。
「はい。厚生省公安局刑事課一係監視官、宜野座です。後ろにいる4名は、執行官です。我々も限られた時間内で捜査を行わなくてはなりません。まずは、遺体発見現場へ案内してください。」
「え、あ、はい……。」
 責任者兼延長と名乗った本田は、右手で持ったハンカチをくしゃりと握って、そのままポケットの中へ突っ込んで、重い足取りで歩き始めた。
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