第45章 御伽話 Ⅰ
『俺も、官営のテーマパークで遺体が発見されたという他、詳しくは聞かされていない。大方、ドローンの故障か何かが原因だろうが。』
運転席の執行官乗車スペースから、スピーカーを通して宜野座の声が響く。
『……まぁ、それが分からないから、現場をキチンと調べるために、公安局刑事課一係に出動命令が下りたの。』
「状況について、今わかっている範囲で説明してくれ。」
狡噛が、鋭い目線をモニターへ投げかけた。
『了解よ、慎也くん。事件は本日11時――――つまり今から約2時間前に、目黒区にある官営テーマパーク、『フェアリー☆ランド』で起こったの。……スタッフルーム内で、遺体が発見されたのよ。すでにドローンが現場検証を終えているから、その資料をモニターに表示するわね。ハイ。』
唐之杜の声に合わせて映し出されたのは、若い女性の死体だった。頸部を何かで切り付けられている。写真を見ただけでも、出血量が多かったことが分かる。誰がどう見たって、機械による事故が原因ではない。明らかに、他殺だ。
「誰かに首を切られて、死んだ――――ってとこッスかね?」
縢が呟く。
『ええ。でも、まだ分析が完了してないから、正確な死因はまたあとでキチンと連絡するわね。近くでドローンが稼働していたという報告も無かったから、事故死……っていう可能性は低いわね。兎に角、2時間前に、この女性、『フェアリー☆ランド』スタッフの真鍋杏(まなべ・あんず)さんが遺体で発見された。すぐに救急搬送されたけれど、時既に遅し。真鍋杏さんはそのまま帰らぬ人になった、ってワケ。付近のカメラから画像情報を貰ったけど、特に怪しい人物も映ってなかったわ。あと……今もテーマパークは、普通に営業されているようよ?』
「「「「!」」」」
その言葉に、執行官一同は驚きを隠せなかった。
人が死んでも、通常営業されているテーマパーク。非日常の中で、日常が稼働させられている、とでも表現するべきだろうか。縢は、頭の片隅でそんなことを考えていた。
『もう着くぞ。降車の準備をしろ。』
宜野座の冷静な声が響く。何にせよ、一係が現場に赴き調べる他は無いのだ。