• テキストサイズ

シャングリラ  【サイコパスR18】

第5章 名前


 ピンボールをやりはじめて10分ぐらい経った頃。香ばしい匂いが鼻腔を刺激するのを感じた。何だろう、この匂い。もしかして、「料理」の匂い?
 私の足は、自然にキッチンの方向へと向かっていた。
「ん?まだだよ。何何?もうお腹空いて我慢できなくなってきた?」
 かがりさんは、また悪戯っぽい笑みを向けてきたが、すぐにまた手元へと視線を戻した。かがりさんは、いつの間にか黒いスーツから部屋着に着替えていて、腰には黒色のカフェエプロンをしていた。その姿に、なぜかドキッとした。

「ちっ……違いますっ!」
 私は、割と勢いよく否定した。かがりさんにドキッとしてしまった事実を隠すように。
「悠里ちゃん、慌てちゃって~。そんなにお腹空いてたの?お昼ちゃんと食べたの?」
 アハハ、と笑いながら、かがりさんは冗談を言ってくる。良かった。バレてない。かがりさんは、私と会話しながらも、カウンターの奥でテキパキと作業を進めているようだ。こんなことを思うのは失礼だけど、見た目よりも器用な人なのかもしれない。
「ちゃんと食べましたよ!お昼は公安局の食堂で、ちゃんと日替わりランチ食べました!」
「んじゃ、こうやって料理してる俺に見惚れてた、とか?」

/ 591ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp