第43章 メイド・イン・ラブ Ⅱ
「うん。いいよ。」
言いながら、私は秀星くんの頭を撫でた。整髪料も何もついていない、秀星くんの髪。私に撫でられる瞬間には、軽く目を閉じて、気持ちよさそうにしていた。……小動物みたいでカワイイ!カワイイ!!
私は、お皿に乗ったレアチーズケーキを、一口で充分食べられるサイズに切り分けてフォークに刺し、秀星くんの口までもっていった。
秀星くんは、軽く口を開いて、フォークに刺さったケーキを食べてくれた。
むぐむぐと咀嚼する様子が可愛くて、何だかニヤケてきてしまった。
「ん?悠里ちゃん?」
秀星くんが、不思議そうに私を見つめている。
……秀星くんの小さい頃って、どんな感じだったんだろう?私に知る術はないけれど、きっとすごく可愛かったんだろうな……。21歳の秀星くんだって、こんなに可愛いんだから、きっと幼い頃なんて、もっともっと可愛らしかったに違いない。両親は、いろんな意味で目が離せなかっただろうな……。それ故に、『お別れ』の時は……、いや、やめておこう。私なんかが想像したところで、きっとその先は分からない。それに、思考だけとはいえ、そこに踏み込むのは、違う気がする。
「ううん。何でも……、何でもない。」
「……?うん……?まぁ、悠里ちゃんがそう言うなら、それでいいけどさ。ね、続きは?」
「あ、ごめんね。」
同じようにケーキを切り分けて、秀星くんの口に運ぶ。秀星くんは、時々紅茶を飲みながら、黙々とケーキを咀嚼している。
最後の一口を食べ終えたところで、秀星くんは、カップに残っていた紅茶をぐいっと飲み干した。
「ん。美味しかった。ごちそうさま!」
ニッと、悪戯っぽく笑う秀星くんに、不覚にもドキッとしてしまった。いや、ケーキ自体は秀星くんが作ったわけだから、私にごちそうさまと言うのは少し違う気もする。でも、いいや。細かいことは、気にしなくても。
「……うん。どういたしまして。」
秀星くんは立ち上がって、食器を食洗器に放り込んだ。