第43章 メイド・イン・ラブ Ⅱ
「「は?」じゃなくてさ。こう……。悠里ちゃんがケーキを切り分けてくれてさ、「あーん」とか……。」
「……。は、恥ずかしいよ……。」
「誰も見てないって!」
「秀星くんが見てるし!」
私は、軽くパニック状態。
「この間、もっと恥ずかしいことやっといて、何言ってんの?」
「秀星くん、何てこと言うの!?もう、嫌!こんな服、脱いでくる!」
離れようとしたら、秀星くんに腕を掴まれた。
「俺さ……。こんな身の上じゃん……。こうやって甘えられる人間なんて、悠里ちゃんぐらいしかいねぇのに……。」
秀星くんは、掴んでいた私の腕を離しながら続けた。
「でも、だからこそ、悠里ちゃんには嫌われたくないから、もう言わねーよ……。」
秀星くんは、俯き加減に、私から目を逸らしながら答えた。そ、そんな風にされたら、私、もう何も言えなくなる……。っていうか、秀星くん……、分かって言ってるよね?
「わ、分かったよ……。まぁ、私も、ちょっと大人気(おとなげ)なかったよね……。ゴメンね……。私で良かったら、甘えてくれて大丈夫だよ……?」
それに、こうやって秀星くんが甘えてきてくれたことなんて、よく考えればそうそう無かったわけだし……。小動物的で、カワイイ秀星くんが見られるのであれば、それはそれでオイシイかもしれない。オイシイかもしれない!!
「ほ、ホント……?」
秀星くんの顔が、一瞬にして明るくなった。……やっぱり、さっきのには演技が入っていたな……!でも、言い方には多分に演技が含まれていたとしても、内容については、あながち嘘でもないような、そんな気がした。むしろ、紛れもない本心ではないだろうか?本人が言うには、秀星くんは5歳でサイコパス検診にはじかれて、そこからは『更生施設』暮らし。当然、両親とは離れて暮らしていたことになる。施設には職員もいたらしいが、秀星くんが言うには、そこの職員は『潜在犯』のことなんて、およそ同じ『人間』として接してはくれなかったらしい。もし、秀星くんの言葉通りだとすれば、それはあまりにも、『人間』の温かみからは遠すぎるのではないだろうか。