第43章 メイド・イン・ラブ Ⅱ
「ダメ!」
「……え?」
秀星くんは、なぜか強い口調で私を制した。なんだろう……。私、おかしなこと言ってしまっただろうか……。
「あ、ゴメン。そうじゃなくてさ。俺、疲れてるから、何ていうか、こう……。悠里ちゃんが俺を癒してよ。あ、俺のお世話する~っていうの?兎に角、そんな感じで!」
「あ、うん……?」
正直、秀星くんが言っていることの意味がよく分からない。秀星くんは、私に帰ってもらいたくないって思っていることは分かったし、それは私だって嬉しい。でも、癒し?お世話?何が言いたいんだろう……。
「私、家事とか苦手で、「料理」もオートサーバーに頼りっぱなしだし、洗濯も掃除も、大体はドローンに任せてるから……。だから、あんまり力になれないと思う……。ごめんね、秀星くん……。」
そもそも、家事スキルなんていうのは、教育課程でも磨かれることがほとんどない。そりゃあ、特殊な教育機関で古い教育課程を貫いている学校ならば話は別なのかもしれないけど、一般庶民の私では、どうしようもない。いや、秀星くんの希望には、できる限り応えたいけど……。
「ん~……、俺の説明が悪かったかな……。まぁ、いいや。悠里ちゃん、ちょっとそこで待ってて?」
秀星くんは、もどかしそうにした後、どこかへ消えてしまった。
ほどなくして戻って来た秀星くんの手には、紙袋が提げられていた。
「?」
秀星くんは、ガサガサと紙袋に手を突っ込んだ。
「悠里ちゃん、まずはコレ着て!」
両手で突き出された洋服は、黒いワンピースと白いエプロンが合体したような、何とも不思議なデザインだった。それにしても、裾や袖に、フリルやレースがふんだんにあしらわれており、フェミニンさを感じさせる。……これを、私が……、着るの?え?
「……。えっと……。」
「……あ、悠里ちゃん、大丈夫?引いてる……?」
「う、ううん……。大丈夫……。」
いや、服自体は別に……。むしろ、可愛いと思う。でも、これを私が着てしまって、その……、似合う自信は無い。