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シャングリラ  【サイコパスR18】

第5章 名前


「あ……!」
 鉄球の一部が下に落ちそう、と思った瞬間、かがりさんが手前のボタンを押すと、短いバーのようなものが跳ね上がって、鉄球は再び上部へ打ち上げられた。
「こうやって、ボールが落ちそう、って思ったら、右か左の対応するボタンを押してやるだけ。どう?単純っしょ?」
 かがりさんの指先一つで、鉄球が何度も打ち上げられていく様子が、見ていて何とも不思議だった。最近のゲーム機なんかでは、ボタン一つでもっといろんなことができるのは知ってるけど、そういう「不思議」とはまた違う「不思議」。
「んで」
 かがりさんは、タイミングよく操作していた手を止める。鉄球は、瞬く間に台の下にあった穴へと吸い込まれていった。
「こんな風に、全部のボールを落とすと、ゲームオーバー。最終的には、役を揃えたりなんかして、スコアをたくさん稼いだりするんだけど、初めてなら、まずは落とさないようにするだけ。」
 こんな単純なのに、スコアとか、役とかがあるのか。
「どう?初めて見たピンボールのご感想は?」
 僅かに試すような視線を感じた。

「うん、初めて見ましたけど、意外と奥が深いのかもしれないなぁって、思いました。単純な仕組みに見えますけど、全然それだけじゃないんですね。細かいところに、パッと見では分からない仕掛けがあったりして、それが、なんていうか、新鮮で面白いです。ちょっとだけ、これに触っててもいいですか?」
 かがりさんは、私の言葉を聞いて、ほんの少しだけ満足そうに笑ったように見えた。

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