第40章 ふたり
「!……、しゅう、せい、くん……?」
私を見てくれた秀星くんの目には、かすかに涙が滲んでいた。
「だってさ、俺、『潜在犯』じゃん。死ぬまで、『施設』の中で過ごすハズだったのにさ、こうやって外に出られたし――――――悠里ちゃんがここまで俺のコト想ってくれてる。……、ホント、恋なんて夢のまた夢、夢物語だったのにさ……!」
秀星くんの声は、震えていた。
「俺、スゲー嬉しい。……、っ、俺さ、……ここまで誰かに――――――」
言葉の代わりに、秀星くんの目から、涙が一粒、零れ落ちた。私も、言葉が浮かばない。こんなにも、秀星くんに対して感情が湧き上がってくるのに、そのひとつだって、言葉にならない。
「……、っ、しゅう、せい、くん……!」
途切れ途切れになりながらも、秀星くんの名前を呼ぶ。
「――――っ!」
この感情を、私の体の中でいっぱいいっぱいになっている感情なんて言葉にならないままに、それでもどうにかして秀星くんに伝えたくて、私は力いっぱい秀星くんに抱き付いた。秀星くんは、迷いなく私を受け止めてくれた。すぐに伝わってきた、秀星くんの体温。ただひたすらに、熱かった。きっと、私だって負けないぐらいに熱っぽい。私の眼からも、止まったと思っていた涙が、また滲んできた。
「――――――俺だって、俺だって、本当なら―――――!もっと悠里ちゃんのこと、っ……!なんで、なんで―――――……!」
秀星くんは、私を強く抱きしめながら、絞り出すように言葉を紡ぐ。
「なんで俺は―――――!っ、なんで――――!」
「もう、いいよ。もういい、秀星くん。私――――、私、もう充分。充分すぎるぐらい、返せないぐらい、秀星くんにたくさん貰ってる。だから、私、幸せ過ぎるぐらい!!」
やっと出てきた私の言葉は、偽らざる本心だ。声は枯れかけているばかりか、また涙が溢れてきている。それでも、心の限り叫ぶ。
「っ―――――!」
私を抱きしめる秀星くんの腕に込められた力が、一層強まった。