第40章 ふたり
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「……、ぁ……、はぁ……、はぁ……!っ、ぁ、……」
数十分が経ったのか、それとももっと時間が経ったのか。もう時間の感覚すらも麻痺してしまっている私には分からないけど、とにかく泣き疲れた。声も枯れかけている。
「悠里、ちゃん……?」
「ん、……、っ、しゅう、せい、くん……。ごめ、な、さ……」
「……、うん?……、もう、いいから……、ベッド、いこ……?」
泣き疲れてすっかり重くなった私の体。秀星くんは、ソファーから立ち上がって、私の手を取って立たせようとしてくれた。でも、私の体は、私が予想していたよりも重かった。それでも、秀星くんが差しだしてくれた手を握って、立ち上がる。そのまま、引かれる手。俯いたまま、秀星くんの手を握って歩く。
久しぶりの、秀星くんのベッド。ぼんやりとした間接照明が、妙に落ち着く。
「座って?」
秀星くんに促されるままに、隣同士、秀星くんとベッドに腰掛ける。
「……、ね、悠里ちゃん。……少しは、落ち着いた?」
「……うん。」
私は、小さく頷く。
「ねぇ……、悠里ちゃん、どしたの?『潜在犯』の俺が人生相談なんて、冗談にもならないけどさ……。だからまぁ、俺には聴くぐらいしか出来ねーけど。」
そんな風に言わないで。秀星くんは、私にとって大切な秀星くんだよ。それに、そんな風に言われたら、全部言いたくなってしまう。ううん。本当は全部言ってしまって、それでも受け入れられたい。私の感情を、秀星くんに受けとめてもらいたい。秀星くんがいい。秀星くん以外は嫌。
「……、もし……、秀星くんが……、引いたり……、しないなら……。」
躊躇いがちに、それでも私は何とか言葉を紡ぐ。
「引かないって。っていうか、それを言うなら、俺の方が……って、これはいいや。まぁ、とにかく、俺は悠里ちゃんに引いたりしないよ。」
穏やかな低音。秀星くんの言葉は、自然に、何の抵抗もなく私の胸に落ちた。「俺の方が……」の続きは、微妙に気になるところだけど。
「……、秀星くんが……、そう言って、くれるなら……。」
「うん。」