第40章 ふたり
「……っく、……、ぅ、う、うわああああああああああああああああああああああああ!!」
こうなってしまっては、もう自分で自分をコントロールできない。私は、幼児のように、声をあげて泣き出してしまった。もう、自分だけで収拾がつきそうにもない。
「ちょ!?悠里ちゃん!?」
秀星くんは、恐らくビックリしたのだろう。今まで聞いた声の中で、最高に驚いている。そして、声は裏返っていた。でも、もう私にそんなことを気に留められるだけの余裕はない。
「な、なんで悠里ちゃんが泣くの?ちょ、え……?え……?」
俯いているせいで、秀星くんの姿は見えないけど、秀星くんは明らかに狼狽(うろた)えている。
「あああああああああああああああああ―――――――――!!」
私は、両手で顔を覆って、泣き続けることしかできない。ごめんなさい、秀星くん。でも、抱きしめてくれたら、嬉しいです。
泣き続けるだけの私の頭に、迷いがちな秀星くんの手が置かれた。オーバーヒートしている私の脳。秀星くんの程良い温度の手は、私の頭から余分な熱を奪ってくれたような気がした。
そして。
「……、っく、う……?」
秀星くんは、ソファーに座る私を、抱き寄せた。それも、ひどく躊躇いがちに。
「っぅ、あ……、ああああああああああああああ!」
それでも私は、泣き続ける。秀星くんの腕の中なのに。ずっと包まれたかった腕なのに。こんな私、もう、自分でもどうしていいか分からない。ごめんなさい、秀星くん。
「悠里ちゃん、ごめん……。」
秀星くんは、そう言ったきり、黙ってしまった。秀星くんが謝る必要なんてない。
「あああああああああああああああああああああ―――――――!」
私は、ひたすらに泣き続けた。いっぱいいっぱいになっていたものを吐き出すように。秀星くんの温度と匂いを感じながら、荒い呼吸と嗚咽(おえつ)を繰り返した。