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シャングリラ  【サイコパスR18】

第40章 ふたり


「ん……!すっごく、おいしい……!すごいね、秀星くん……!」
 相変わらず、気の利いたコメントは一切出来ない私。もし、シビュラの職業適性判定に「グルメリポーター」なる項目があったとすれば、私は間違いなく最低評価がつくだろう。そもそも適性が無さ過ぎて判定すらできないかもしれない。それでも、秀星くんは私の反応を見て、嬉しそうに笑ってくれる。
「クッキングアイドルと呼んでくれ!」
 秀星くんは、ビッと勢いよく親指を立てて、ニカッと笑った。
「何それ~?あ、じゃあ私、ファン第1号になる!」
 笑いながら答えれば、秀星くんも肩を揺らした。
「おっ、嬉しいこと言ってくれんじゃん。もしや、メニューの追加を狙ってるな~?OK!んじゃ、肉まんのおかわりと、サラダとスープ、持ってくるね!」
 カラカラと笑って、秀星くんはキッチンの奥へと行ってしまった。

「―――――っ……。」
 私は、いつも通りだろうか。ちゃんと、いつもの「月島悠里」だろうか。思わず、目線が下がる。うまい具合に、いつもの私を繕えているだろうか。私の汚い内面を―――――
「……ねぇ、どうしたの?」
「―――!!?」
 背筋が凍った。声が近すぎる。慌てて顔を上げる。秀星くんの声、いつもよりも低い。
「……ぁ、しゅ……、せいくん……。どうしたの?」
 表情を繕う余裕もないままに、声を出す。いつも通りの、私の声。
「それはもう、コッチのセリフなんだけど。」
 秀星くんはソファーに腰掛ける私を見下ろすようにしている。私は、秀星くんと目を合わせている。でも、私は秀星くんの表情からも、声からも、秀星くんの感情を読み取ることができない。秀星くんの手にもテーブルにも、持ってくると言った「料理」は無い。
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