第38章 小さな世界
「ありがとう……。でも、あんまり変わらないかな……。ごめんね……。」
秀星くんがこんなに心配してくれているのに、変わらない鈍痛。
「でも、動けるし、大丈夫だよ。今日だって、普通に仕事してたわけだし。」
「そっか……。」
秀星くんは、少し上を見て、何か考えている風だった。でも、やがてそれも終えて、普段の高さに目線を戻した。
「何か、俺にできることとか、無い?」
秀星くんは、私に向き直って、尋ねてきた。
「え……?」
スープも作ってもらい、毛布も借りている。これ以上?もう充分すぎるけど……。……、あ、でも……、もし、秀星くんが嫌じゃないなら……。
「手、貸して?」
「何?手?」
秀星くんは、きょとんとしながらも、素直に左手を差し出してくれた。
私は、秀星くんの左手を両手で取って、秀星くんの左手を毛布の上からそっと自分のお腹にあてた。
「ちょ……!悠里ちゃん!?」
秀星くんが慌てふためいているのを無視して、私は秀星くんの左手の上に自分の両手を重ねた。
「それ……、効果あんの?」
「特効薬……だったらいいな。」
言いながらも、秀星くんは手をひっこめることはせずに、手を貸し続けてくれている。
「……」
「…………」
生理痛と告げたときよりも、圧倒的に長い沈黙が流れている。秀星くんは、ピクリとも動かない。
「ねぇ、秀星くん……。」
「ん?」
突然、思い浮かんだ言葉。特に理由は無い、はず。口にしようか迷うところだけど、いいや。たまにはぶつけてみよう。
「好き。」
「……!ちょ、どしたの、突然!?」
私のお腹の上にある左手も、びくんと反応した。
「何となく。」
「……?悠里ちゃん?」
「うん。何でもない。ただ単に、浮かんだ言葉を口にしてみただけ。」
「……。そっか。」