第38章 小さな世界
再び流れる沈黙。
「秀星くんの手、あったかい。私、秀星くんの手、好き。」
秀星くんの手は、程良い温度を保っていて、私の手に心地良い。
秀星くんの手が一瞬だけピクンと反応した。同時に、一瞬ためらうような表情を浮かべた後、苦笑交じりに「そう?」と漏らした。その苦笑の理由は多分、秀星くんが一瞬でも、自らの『仕事』をよぎらせたからなんだろうな。重ねている手から、秀星くんの戸惑いが伝わってくるような気がする。
「うん?私は、秀星くんの手、好きだよ?あったかい。」
秀星くんは、また暫(しば)しの沈黙に入った。
「……まぁ、悠里ちゃんがそう言ってくれんなら、いつでも貸すよ。」
穏やかな低音が、静寂の中に響いて、私の奥深くにまで入ってきた。
「うん。」
私の声は、満ち足りていた。それが、秀星くんの耳にも届いて、私の気持ちだってきっと伝わったと信じたい。