第38章 小さな世界
「……?悠里ちゃん?」
流石に、挙動が変だ。「大丈夫」な人はこんな行動はとらない。
「やっぱり調子悪いんじゃん。風邪?」
別に、隠したいわけじゃないけど……。でも、これ以上黙っていると、秀星くんが変に心配するし……。まぁ、いっか。ちょっと抵抗はあるけど、言ってみよう。
「ううん。風邪じゃなくて……、その……。生理痛が……、うん……。」
「あ……。」
キッチリ3秒、静寂がこの部屋を支配した。秀星くんは、見るからに返事に困っているし!
「えっと……。普段はそんなに痛くならないんだけど、今月は……ちょっと調子が悪いっていうか、その……。」
生理の話なんてしても、秀星くんにしてみれば実感の欠片も湧かないだろう。それでも、心配してくれている秀星くんには、伝えたかった。
秀星くんは、何も言わないままに突然席を立って、向こうへ行ってしまった。少ししてから戻って来た秀星くんの手には、小さな毛布が握られていた。
「……?」
「内臓系の痛みって、冷えると悪化するでしょ。使いなよ。」
「秀星くん……!ありがとう……!」
私はすぐさま毛布を受け取って、ひざ掛けにしてみた。即効性は無いけど、お腹の周りがじんわりとあったかい。それよりも、秀星くんの優しさが、すごくあったかい……!私は、嬉しくなって、ひざ掛けに頬ずりをした。
「大袈裟でしょ、ソレ。」
秀星くんは、照れたように笑って、ぽりぽりと頬を掻いた。相変わらず、こういうちょっとしたところで秀星くんは可愛い。
「だって、嬉しいんだもん……!」
食後、帰るには時間が早かったので、秀星くんと並んで、ソファーに座っている。秀星くんのスープと毛布で、生理痛は見事に何処かへ消えた……と言いたいところだけど、現実は決してそう甘くなく、鈍痛が続いている。激しい痛みじゃないのが救い。
「痛みは?少しはマシ?」
秀星くんが尋ねてくれる。気持ち的には、「秀星くんのお蔭で、もうすっかり痛みなんて無いよ!!」とか答えたいけど、現実は違うので、そうは答えられない。更なる悪化はしていないけど、マシになったとは言えない。