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シャングリラ  【サイコパスR18】

第38章 小さな世界


***

「いらっしゃ~い!」
 秀星くんが出迎えてくれて、お部屋の中に通してくれる。
 それにしても、相変わらず若干お腹が痛い……。痛みが増しているような気がするのは、多分気のせいじゃない。
「うん。お邪魔します。」
「ささ、まずは軽くメシにしよ!今日はあんまり時間なくて、軽くしか用意できてないけど、いい?お腹空いてない?」
 秀星くんは、てきぱきと食事の準備を進めてくれている。
「う、うん……。」
「ならいっか。……って、あれ?悠里ちゃん、顔色悪くない?」
「ううん、何でもない。大丈夫。」
 なんていうのは全くの嘘じゃないけど、本当でもない。下腹部が痛む。
「……ねぇ。」
 秀星くんは、食事の支度を一旦止めて、ソファーに座る私に近づいてきた。そして、手の平を私のおでこにそっと当てた。
「ん……?」
「熱は……無いか。でも、何かスッキリしないじゃん。どーしたの?」
 秀星くんは、心配そうな眼差しで、私を見つめてきた。別に、黙っていたいわけじゃないけど、秀星くんに説明するのも、ちょっと抵抗があるっていうか……。
「まぁ、言いたくないならいいけどさ。食欲は?ある?あー、でもあんまり無理しない方がいいか……。何か、食べやすいもの作ろっか?」
「大丈夫。あ……、でも、あったかいものがあったら、嬉しい、かな……。」
 冷えると、腹痛が悪化しそうだから……。
「オッケー。んじゃ、スープ作ったげるね!」


 数十分と経たないうちに、テーブルの上にはサンドイッチとスープが並んだ。本当は、サラダにする予定だったらしいけど、私のリクエストで急遽スープに変更してくれた。
「あったかい……。」
 スープを一口飲めば、自然とため息が漏れた。秀星くんのスープが、貧血気味で冷えがちな体に染み渡るような気がする。
「な~んか、随分美味しそうに飲んでくれんじゃん。」
 秀星くんまで、嬉しそうにしてくれている。その顔を見ていると、私も幸せな気分になれる。秀星くんにはこうして気を遣わせてしまっているけど、多少腹痛があろうとも、私はここに来て良かった。でも、幸せな気分に浸っていても、腹痛というのは突如やってくるもの。
「―――――っ……」
 スープの入ったマグカップを一度テーブルに戻し、突然やってきた痛みに耐える。
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