第37章 願い
「じゃあ、俺は飲み物でも買ってきてやるよ。って言っても、そこの自販機だけどな。月島は何がいい?」
「わ!ありがとうございます、狡噛さん!ホットの紅茶なら何でも!」
「アンタは?」
「……、ぇ?えぇっと……、なんでも……おまかせ……します……。」
新田さんは、目が泳いでいる。狡噛さんの迫力に負けたのかな……。眼力がすごいから、無理もないかな……。
「そうか。」
狡噛さんは、短く言ってこの場を離れた。
「……。先輩は……、こんな風に『潜在犯』と話をして、仕事してるんです……、よね?怖くないですか?抵抗とか、無いんですか?」
狡噛さんの姿が見えなくなったその瞬間に、新田さんが小声かつ早口で話し掛けてきた。
「ん~?抵抗?」
新田さんから飛び出してきた思いもよらない言葉に、私は首をかしげてしまった。
抵抗―――――かぁ。最初は、どう接していいか分からなかったけど、だからと言って、一緒に仕事をすることに抵抗は無かった。
「う~ん……、抵抗、は無いかなぁ……。最初は私も、どう付き合っていいのか分からなかったけど、話しているうちに、それぞれの凄さが分かってきて、尊敬できるっていうか……。さっきの狡噛さんの話、聞いてたでしょ?あんなふうに、私ひとりで考えたって出てこないものの見方を教えてもらえることがあるから、勉強になるかな……。」
「勉強、ですか?」
「うん、そう。」
「……、そうですか……。でも、相手は『潜在犯』ですよ?今は監視官さんもいないのに、大丈夫なんですか?」
「宜野座監視官が大丈夫と判断したからこそ、監視官はこの場を離れたんだよ。」
「でも……」