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シャングリラ  【サイコパスR18】

第37章 願い


「ありがとうございました。参考になりました。でも、狡噛さんって本当に博識ですね。すごいなぁ……って、いつも思います。」
「俺にお上手言ったところで、何も出てこないぜ。安っぽい世辞でも、言う相手は選んだ方が出世できる。何なら、自分の上司にでも言った方が、自分の身が安泰だぞ。まぁ、アンタに出世意欲があるのなら、だが。」
「アハハ、まぁ、俺ら『執行官』に言っても、何のメリットも無いからね~。新田ちゃんだっけ?新田ちゃんも、気ィつけなよ。」
「えっ?!」
 新田さんは、突然名前を呼ばれて、ビクッとしていた。もしかして、『執行官』を前にして、どうしていいか分からないのかもしれない。私も、半年前はそうだったこが、今では遠い昔みたいに思い出されて、胸がきゅっとなった。
「あ、そうだ!俺、悠里ちゃんが仕事でココに来るって聞いて、クッキー多目に焼いてきたんだった。さっき、ギノさんとクニっちにもあげて、美味しいって言ってもらったから、味は保証済みよ?コウちゃんも食べるよね?新田ちゃんも、甘いもの好き?」
「ああ。食う。丁度小腹が減ってたんだ。」
「うん!食べたい!秀星くんのクッキー久し振りだし、美味しいから大好き!」
 もう、市販の食品じゃ、何か物足りないぐらい、私の舌は肥えてしまっている気がする。いや、そうじゃなくて……、秀星くんの「料理」は、私の心の中を、満たしてくれるような、そんな気がする。
「え……、クッキー、ですか……?」
 新田さんは、怪訝な顔を浮かべている。無理もない。「クッキー」を「焼いてきた」と言われても、ピンと来ないのだろう。
「秀星くんのクッキー、美味しいよ?」
「は、はぁ……。」
 新田さんの顔に、さらに困惑の色が上乗せされたのが、はっきりと見て取れた。
「んじゃ、すぐ取ってくる!」
 秀星くんは、新田さんの反応を特に気にする様子もなく、クッキーを取りに、一係のオフィスへと駆けて行った。もしかしたら、何かしら言いたいことはあるのかもしれないけれど。
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