第37章 願い
「あー!!コウちゃん、さりげなく悠里ちゃんに優しくしてる!?今日は新人の女のコが来てるからって、張り切っちゃって~!コウちゃんも男ってコト?」
「……馬鹿かお前は。」
――――ゴッ
鈍い音がした。狡噛さんの一撃が秀星くんに見事クリーンヒットした音だった。
「痛ってぇ~~~!コウちゃん、何も打(ぶ)つこと無いじゃん!!悠里ちゃんも、黙ってないで何か言ってよ!」
「……、もう1発ぐらいなら大丈夫だと思いますよ。」
「だそうだ。」
大好きな秀星くんに、頼れるお兄さんのような狡噛さん、時々口が悪いみたいだけど私の仕事を見守ってくれている宜野座監視官、穏やかに話し掛けてくれる征陸さん、交わす言葉は少しだけど私を気にかけてくれる六合塚さん、ざっくばらんに色々なことを話せる先生、何でも優しく教えてくれる青柳監視官。たった半年の間だけど、管財課オフィスよりも、刑事課の皆さんとの人間関係の方が、私にとって心地の良いものになっている。サイコハザードがどうこうとか言われているのが、まるで嘘のよう。
「えっと……、他に、トレーニングルーム内の設備で、要望とかありませんか?全て希望通りになるかは分かりませんけど。」
「あとは、細かいことになるけど、いいか?このランニングマシンなんだが……」
この後も、狡噛さんからたっぷりと要望を聞いて、いろんなことを教えてもらった。秀星くんは、特に何も用事は無いみたいだったけど、時々狡噛さんと私の会話に入ってきては、楽しそうに肩を揺らしていた。新田さんは、ここに来るのが初めてだからか、ほとんど喋らずに私たちの様子を見ていた。